改行の少ない文章は「意味のまとまり」がつかみにくく読みにくいですが、改行の多すぎる文章もまた同じ理由から読みにくくなります。
まずは改行の基本をまとめます。
- 時間の変化をあらわす
- 場所の変化をあらわす
- 話題の変化をあらわす
例:時間の変化
1時15分。会議が始まった。課長は遅刻してくるし、部長は早くもイライラしている。わたしは控えめにしていたが、内心実はのんびりな気分だった。どうにかなるさ。
やがてまったくなんの進展もないまま会議は終わり、早くも西日がもの悲しい。
例:場所の変化
てくてくと山道を登り続け、やがて、山小屋へ出た。しばらく休んでいこう、ということに話がまとまり、三々五々、荷物を降ろす。
山小屋のなかは、あかあかと火が燃えていた。
例:話題の変化
その日は朝から雨だった。暴風が吹き荒れ、どうやら台風の影響らしい。まったく油断していたわたしは焦った。電車は動くのだろうか。大事な約束があるのだ。
約束というのは、10年ぶりの再会である。音信不通になっていた知人がいて、手紙が届いたのだ。
縦書きでないのと、あまり長い例文でないので、ちょっとわかりにくいかもしれません。
ですが、改行が計画的にきちんとされている文章は読みやすさが圧倒的に違います。
まったく同じ文章でも改行の位置によって意味の理解や印象が変わってくるからです。
以上は一応の基本になりますが、文学的な表現のためという場合はずっと技巧的になってきます。
森のなかで迷っている。ここはあまりに暗い、暗すぎる。急ぎ足で、歩く、歩く、歩く。そのときだ、不意に視界がひらけたのは。
森のなかで迷っている。ここはあまりに暗い、暗すぎる。急ぎ足で、歩く、歩く、歩く。
そのとき。
不意に視界がひらけた。
どちらが正解ということではありません。どちらも表現上の技術にすぎません。
ただ、ずいぶん印象が違うということがわかると思います。
ちなみに、この文章術のような横書きのウェブ文章では改段落(空白の行)が改行に相当します。
話題が変化するごとに空白を置いています。
ところで、視覚的な見やすさのためにやたらと改行を多用する、という本が最近は多いようです。
ですがこれはおすすめできません。
そこらじゅうに改行があるということは、逆に改行ひとつひとつの意味や効果がほとんどなくなってしまうからです。
改行ひとつでかなりいろいろな表現ができるのに、せっかくの表現手段を自分から捨てることになってしまいます。
それに、改行ばかりの文章は意味の流れがぶつ切れに感じられ、かえって読みにくいものです。
小説に限らず、書類・メールなど普段の文章でも改行による「意味のまとまり」は重要です。
ええい面倒だとなにもかも改行してしまわず、ぜひ改行による表現力を使いこなしてください。